「うちの子、食べるのがやたらと遅い…」
「夜寝ているときに、いびきをかいていることがある…」
そんな心配を抱える親御様は少なくありません。実はこうした症状の背景には、口腔機能発達不全症という見過ごされがちな発達課題が隠れている可能性があります。
6月前半の記事では、口腔機能発達不全症の【早期発見のポイント】についてご紹介しました。
今回はこの「口腔機能発達不全症」を放置してしまった場合に、どんなリスクがあるのかを詳しく解説します。
目次
■口腔機能発達不全症とは?見逃されやすい“口の育ち”の異常
口腔機能発達不全症とは、「食べる」「飲み込む」「話す」「呼吸する」など、口の周囲の基本的な機能の発達に何らかの遅れや不全がある状態を指します。
この疾患は、乳幼児期から学童期にかけて徐々に表れてくるため、「個性」や「成長の個人差」「大人になれば治る」として放置されがちです。
■放置するとどんなリスクがあるの?
口腔機能発達不全症を放っておくと、次のようなリスクが生じる可能性があります。
◎噛めない・飲み込めない=栄養障害のリスクに
食べ物をしっかり噛めなかったり、うまく飲み込めなかったりすると、栄養摂取が不十分になります。特に鉄分やカルシウムなど、成長期に欠かせない栄養素の吸収が不足すると、身長の伸びや免疫力、集中力にも影響が出る可能性があります。
また、偏食の背景に「うまく食べられない」という身体的な理由が隠れているケースも多く見られます。
◎発音や言葉の発達が遅れることも
舌の動きや口がうまく機能しないと、発音の明瞭さに影響しやすくなります。特に「サ行」「ラ行」など、舌の動きを要する音がうまく言えないまま年齢を重ねると、対人関係や自己表現、コンプレックスにもつながることがあります。
「言葉が遅いかもしれない」と感じたら、口腔機能との関連を確認してみることも重要です。
◎いびきや口呼吸=睡眠の質が悪化に
口呼吸やいびきがある子どもは、睡眠中に十分な酸素が取り込めず、睡眠の質が低下しやすくなります。
これにより、
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朝起きられない
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日中の集中力低下
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成長ホルモンの分泌低下
といった影響が生じ、学業成績や情緒面にも悪影響を及ぼすリスクがあります。
■顎や歯並びへの影響も見逃せない
舌の位置や口の使い方に偏りがあると、顎の発育に不均衡が生じたり、歯並びが乱れたりすることがあります。歯科矯正が必要になるケースも多く、思春期以降のコンプレックスにもつながりかねません。
■こんなサインがあれば一度チェックを
次のような様子が見られたら、専門機関での相談を検討しましょう。
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食べるのが人より極端に遅い・こぼす
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クチャクチャ音を立てて食べる
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発音が不明瞭で聞き返されることが多い
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寝ている間にいびきをかく・口が開いている
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歯並びが気になる
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口呼吸をしていることが多い
これらのサインはいずれも、口腔機能の何らかの発達不全と関係している可能性があります。
【子どもの「口の育ち」は全身の発育の土台】
口腔機能発達不全症は、「口だけの問題」ではありません。食べる・話す・呼吸するという基本的な力は、学力・体力・心の育ちにも深く関係しています。
「なんとなく気になるけど様子を見ようかな」と思っていた方も、ぜひこの機会にチェックしてみてください。少しの早期対応が、お子さんの健やかな未来への大きな一歩になります。